トムクルーズ主演、2008年の映画『ワルキューレ』の感想です。
10秒で読めるネタバレ
1943年3月、ドイツは全ての戦線で負け続け降伏は時間の問題だった。しかし、ヒトラーは、あくまで最後の勝利を目指して戦争を続行。
一方、ドイツ国防軍のシュタウフェンベルク大佐(トムクルーズ演じる主人公)。愛するドイツがこれ以上ボロボロにならないように、ヒトラー暗殺計画を企てる。
しかし結果は、歴史の通りで暗殺計画は失敗に。
シュタウフェンベルク大佐は罪を問われて、処刑(射殺)される。
シュタウフェンベルク大佐の死から9か月後、ナチス・ドイツも崩壊。ヒトラーは自殺する。
※トムクルーズ演じる「シュタウフェンベルク大佐」、名前が長いので、以下シュタ大佐と呼ぶ。
感想
ナチス映画なのに、英語かよw
突っ込まざるをえない。
ほら、ナチス映画と言えばヒトラーがドイツ語で激しく演説しているか
ドイツ語で激しく怒っているところを想像しますでしょ?
こんな感じですわ。
それが、英語だと柔らかすぎるのです・・・
「トム様」的な演出が鼻につく
トム様ファンの方には申し訳ないけど・・・
シュタ大佐のロマンスシーン要らないですね。
奥さん出てくるシーン少ないけど、
出てくる度にチュッチュッチュッってして
「何このシーン・・・」って感じに。
歴史を知ってるからこそ楽しめる
歴史オタクでなくとも、ヒトラーが暗殺でなく自殺で死んだことを知っている人の方が多いのではないでしょうか。
ということは、この映画
「暗殺計画が失敗すること」を知っている前提で進んでいくので、
成功するのか、失敗するのか、というドキドキではない。
「シュタ大佐の作戦がバレてしまうのはどのタイミング?」「何が原因で失敗してしまうの?」ということを考えてドキドキ。
ラストはグッとくるよ
ああ、ここで失敗するのか。
ここがダメだったのか、少しずつ歯車が狂っていき、失敗へと落ち着いていきます。
そもそもシュタ大佐がヒトラー暗殺計画を実行したのは、祖国を想う気持ちがあったからです。
そして、シュタ大佐の処刑9か月後に、ナチス・ドイツも崩壊します。
シュタ大佐の考えは間違っていなかった。
だからこそ、彼の死がとても悲しい。
ドイツのためを想い、その想いが間違っていなかったのにも関わらず、「ドイツの敵」として死んでいく。
そういう想いを巡らせているうちに、グッとくるものがありました。
映画の最後の方に出るのですが、
奥様やその子供たちは、シュタ大佐の死後も生き続け、奥様は2006年亡くなったそうです。
垣間見える「ノブレスオブリージュ」の価値観
シュタ大佐は「祖国ドイツのために」と熱く燃えます。
なんでそこまで・・・と思うけど、シュタ大佐は貴族出身なんですね。
きっとシュタ大佐は、欧米諸国で浸透している「ノブレス・オブリージュ」という考えに基づいて行動していたのではと思われます。
特権は、それを持たない人々への義務によって釣り合いが保たれるべきだという「モラル・エコノミー(英語版)」を要約する際に、しばしば用いられる。最近では、主に富裕層、有名人、権力者、高学歴者が「社会の模範となるように振る舞うべきだ」という社会的責任に関して用いられる。
シュタ大佐が所属している「ドイツ国防軍」の要職についている人もほとんどが貴族出身。
一方で、ヒトラーが自分で設立した武装組織「SS(親衛隊) 」やヒトラーの側近が成り上がりで固められていたのとは対照的です。
しかし、シュタ大佐も単なる貴族ではなく、貴族の中でも異端な存在だったようです。
映画の節々でも「それまでの将軍たちが何もしてこなかった」「国防軍の上の人たちは本気では無い」と語り、同じ貴族出身であっても温度差を感じさせるのです。
「時代」という大きな波には逆らえないのか
シュタ大佐の心意気にはグッとくるものがありましたが、同時にガッカリすることもあります。
なぜ、暗殺できなかったのかという疑問も残ります。
ヒトラー暗殺計画は、この映画に描かれているもの以外に40回~50回ほどあったという。演説会場に爆弾を仕掛けたり、スナイパーライフルでの射殺しようとしたり・・・
あれだけ多くの人を犠牲にしておきながら、彼一人を殺すのが難しかったのは何故なのか。
「ヒトラーは神の使いだから」と周りの人が考え始めてもおかしくありません。
ただ、時代を創るのは人であるはずです。
「暗殺」が解決策では無いと思いますが、ヒトラーのような存在を止められなかったのは何故なのか。止めるためにはどうするべきなのか。
シュタ大佐の死を「ただの美しい物語」にするのか、「歴史上意味のある出来事」にするのかは、残された私たち、映画を見た私たちの考え方や行動に託されているのだと思いました。
良い映画だった。