大学生の頃に、家庭教師のバイトをしていました。
短期間で中2の女子を担当したが、一緒にいるのがツラかった。
ツラかった理由は、中2だったからでも女子だったからでもありません。
とにかく嵐の大ファンだったので、ここでは「嵐ちゃん」と呼ぶことにします。
嵐ちゃんは、宿題を全くやらない子でした。
そんな嵐ちゃんに週に1回、90分3000円で授業を行っていました。
お母さんからの「娘の点数を上げてください」という期待に応えようと努力しました。
頭が悪いわけではないが、とにかく勉強に関するモチベーションが上がらない。
困った。とても困っていた。
嵐ちゃんを担当する前は、個別指導塾でそれなりの数の生徒を見ていました。
やる気のない生徒や点数が低かった生徒も数か月後には成績が上がっていくので、人に教えることに自信はありました・・・
嵐ちゃんの点数は上がりそうな気配が全くしなかった。
「なんやコイツは。こっちのテンションも下がるでえ」と思いながら私は自信を無くしていました。
授業を始めて1か月ぐらい経過。
このまま普通の授業をしても点数はあがらん。
そこで「嵐ちゃんを知る」キャンペーンを開始。
勉強そっちのけで、会話を楽しむことにしました。
時給2000円で何してるんじゃ、と思われるかもしれませんが
結局「授業」をしても何も意味がなかったので、長期的なことを考えて人として仲良くなることにチャレンジ。
そう思って嵐ちゃんと話をすると、常に「ニノ」の話題で溢れていました。
「ニノがね・・・ニノがね。」とメチャクチャ嬉しそうに、嵐の二宮さんの話をします。
時折、「相葉ちゃんも~あを;sがwlgkjs;」とか「翔君があ;え;おたえ;おあ」と他のメンバーの話もしていました。
「嵐のラジオ」を聞くのが大好きと言っていたのが印象に残っています。
ラジオの時間帯が遅いせいで、夜更かしをしている。お母さんが「そのせいで学校に遅刻するんです」と少し怒りながら話していた。
今時の中学生なのにラジオを聞くんだ。
そうして延々と続く嵐の話を聞くと、嵐のメンバーはあなたと同じクラスメイトなんですか!?という錯覚に陥ります。
実際に嵐ちゃんが二宮さんに触れるのは、テレビ越しか大好きなラジオ、それか雑誌だけのはずです。
それなのに会話で必ず嵐の話が出てくる。
むしろ嵐の話しか出てきません。
「ニノがね・・」の話を聞くのが途中から怖くなっていきました。
ふと、嵐ちゃん自身の話を聞くと
「私、人と話すの苦手なの。学校の奴らってめちゃくちゃムカつく。あいつらマジでムカつくの。」という答えが返ってくる。
そっか、学校で上手くいっていないのか。
嵐ちゃんを追い詰めないように気を付けながらも、ニノの話は9.5割、嵐ちゃん自身の話も0.5割は聞けるように質問をしていました。
嵐ちゃんは公立中学校に通っていました。
私も公立中学校に通っていました。小学校の時にクラスにいた「きちんとした子たち」は大概私立中学校に進学して、公立中学校に進学するのは「そこそこの子」か「底辺」でした。
「あいつらマジでムカつくの。」という嵐ちゃんの気持ちはとても良く理解できます。
大多数に馴染めない人にとってこういった環境は苦痛でしかない。
ただし、公立中学校のクソみたいな環境から現実逃避するのは必要だけど、嵐ちゃんは「嵐のニノとの現実逃避」に出かけたまま、こちらの世界に帰ってこない気がしてならなかったのです。
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続く・・・